「足し算のAI」で急成長 GMOペイメントゲートウェイ

GMOペイメントゲートウェイ副社長 兼GMOベンチャーパートナーズ ファウンディングパートナー 村松竜

 人工知能(AI)の文字が入る記事を毎日目にするようになって久しい。まだまだ大企業のAI活用のニュースが多いが、私はスタートアップのAI活用に着目している。それも「AIなしでは存在し得なかったサービス」を提供するスタートアップ、すなわちAI型成長の企業だ。

 ある米国のフィンテック投資先は、短期間の少額融資で急成長している。

 一般に銀行は長期設備投資の融資に強みがある。「工場建設資金に10億円、期間5年」といった案件が想像しやすい。計画や経営者をじっくり審査する。逆に期間3カ月100万円の融資を「即決してくれ」となると得意とは言えない。

 しかし個人経営主など、比較的短期間の少額事業資金の融資を受けたいニーズは意外に多い。利幅は小さいが回転が早く、少額融資でも大量自動処理すればビジネスとして成立する。

 ここで威力を発揮するのがAIを使った瞬間審査だ。返済不能に陥る可能性のある人や不正利用者、最初から返済する気のない人を、AIがデータ解析で一瞬で見抜く。彼らには共通の属性や行動パターンがあるらしく、過去の融資利用頻度、銀行口座にある資金の動き、請求書の宛先、融資申請時のオンライン上の挙動、ひいてはツイッター等での発言内容に至るまで、なんと数百もの因子がその解析に使われている。

 前述のフィンテック投資先は、こうした施策で貸倒率を着実に引き下げている。また、ある会社では毎朝、全融資先の前日までの財務状況を集計し信用スコアリングを改定、「追加で貸せる相手」「回収すべき相手」をAIに自己学習させている。売り上げが年率2~4倍のペースで成長しているスタートアップも複数ある。

 私は、企業のAI活用には「引き算のAI」と「足し算のAI」があると思っている。引き算は、効率を上げてコストダウンするためのAI活用だ。世の中に莫大な需要がある。しかしこれが社会で進むと、「私たちの仕事がAIに取って代わられる」という議論になる。導入において、社内で様々な抵抗勢力の壁に阻まれる。

 一方、足し算のAIは、今まで実現しなかった新しいサービスや製品を可能にした。そして、このタイプのスタートアップは従来型とは収益構造がまったく異なる。

 前述の例で言えば、審査担当や営業の人材を採用しなくてよい。そもそも、慢性的に人手不足なのがスタートアップの悩みであり、社員が増えたら増えたで固定費が膨らみ利益が出にくい。この人的部分をAIが担いつつ、人間には見えないデータから利益を生み出す。始めから人手をかけてやっていたら得られなかった超過収益を、ユーザ獲得や金融なら回収作業に集中投下できる。それゆえ成長速度が全く違うのである。

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